2004年08月26日

 長谷工コーポレーションは、マンションの共用部排水管の新しいリフォーム技術「HAM-J工法(ハムジェイ工法)」※1を開発いたしました。従来の更新工法と更生工法のメリットを融合させた新工法で、コストを更生工法と同程度に抑えながら、耐久性・信頼性・施工性に優れたリフォームを可能にしました。入居者が居ながらの施工で、工事はわずか半日程度で完了します。東京都大田区内の解体前のマンションを利用した施工検証を実施し、想定通りの性能を確認しています。今後、築20~30年を経過したマンションを主な対象として、管理組合などに提案してまいります。(特許申請中)

【背 景】

 マンションのリフォーム市場は、2010年には1兆円を超える市場になると推計※2されています。その中でも給水管や排水管など共用設備リニューアルの要望は、今後年々高まっていくと予測されます。排水管の取替え時期と考えられる築30年を経過するマンションは、10年後には140万戸になると推計※3され、更新・更生が大きなテーマになっています。
 これらのマンションの排水管は亜鉛メッキ鋼管(白ガス管)を使ったものがほとんどで、30年を経過するとスライムの影響で配管が閉塞したり、配管自体の腐食から漏水を生じるため、新たに配管を更新するか更生によって延命するか、いずれかのリフォーム方法を実施する必要があります。しかしながら、管類を一新する更新工事は、信頼性は高いものの費用が高く工事期間も長くかかるなどの課題があります。一方、排水管の内面をコーティング等する更生工事は、既設の管内の状況確認が難しく施工の信頼性や保証の面で不安があるとともに、配管の劣化が激しい場合は採用できないのが実情です。

【「HAM-J工法」の特徴】

 今回開発した「HAM-J工法」は、従来の排水管の更新工事と更生工事のメリットを組み合わせた新しい工法です。当社が約39万戸のマンションの設計・施工で培った技術ノウハウに、樹脂管更生工法を持つマルナカ(本社:神奈川県茅ヶ崎市、社長:中尾 朝夫)と、ライニング鋼管技術を持つジャパン・エンヂニアリング(本社:東京都文京区、社長:南雲 一郎)の技術を融合させて開発したものです。
  • コンクリートスラブを壊さずに更新でき、大掛かりな機械・装置を使わないため工事の騒音振動を抑えることができます。
  • 床コンクリートスラブを挟む上下階の2住戸を1ユニットとして施工し、標準で半日程度の時間で工事が終了し通水できるため、居住しながらの施工が可能です。
  • 排水管の内面・継手部分など、施工状況を目視で確認しながら施工できるため、信頼性が高い工法です。
  • 施工後の排水管は建物寿命と同等の耐久性を有し、ほとんどメンテナンス不要です。
  • 従来の更生工法と同程度のコストで施工可能です。

【作業手順】

  1. スラブに埋設されたT型の継手部分を残し、直管部分を切断して取り外す。
  2. T型の継手部分の内面を目視で研磨洗浄し、エポキシ樹脂をライニング。
  3. 新しい直管を取り付け、アメリカなどで広く使用されている接続ジョイント「NO-HUB継手(ノーハブ継手)」で継手部分の管と接合。

【今後の展開】

 当社では、本工法の実用性の確認を完了したことから、今後はマンション管理組合などに積極的に提案してまいります。また特許申請に加えて、技術審査証明の取得に向けた検討を開始しました。すでに開発済みの給水管更新工法「SUPPS-R」(サップス・アール)と、今回開発した「HAM-J工法」を併せて、マンション設備リフォーム技術の体系化により、今後増大するマンションのリフォーム需要に対応していきたいと考えています。

 

注1)共同開発3社(長谷工コーポレーション、マルナカ、ジャパンエンヂニアリング)の頭文字を取った名称
注2)マンションリフォーム推進協議会「マンションリフォーム市場将来需要推計」
注3)国土交通省公表資料を長谷工総合研究所が集計



【「HAM-J工法」手順(建物断面図)】

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