2011年09月26日

長谷工コーポレーション、東急建設、RC建築物の劣化調査・耐震診断から補強設計・施工までを行うコンステックの3社は、新築・既存を問わず中高層から超高層建築物までの様々な揺れを減衰する制振工法『VESダンパー工法』(※)を共同で開発しました。
『VESダンパー工法』は、建築物の上下階の梁間に制振装置(ダンパーシステム)をパネル方式で設置し、風揺れから地震応答まで広く建築物の揺れを低減する制振工法です。同工法はビューローベリタスジャパンの性能証明委員会の審査を経て、2011年8月24日に建築技術性能証明(第BVJ-PA10-001号)を取得しました。

※ VESは、『ViscoElastic(粘弾性の)Stud-type(間柱型)』の略

「VESダンパー工法」の概要

  1. 1.優れた制振装置(VESダンパー)
    • ・従来品と比較して、温度依存性を改善し、且つ、高剛性・高減衰性を実現しました。
    • ・短周期から長周期の幅広い周期帯域と小振幅から大振幅の広範な振幅レベルにおいて安定した減衰性能を発揮することから、中高層建築物の耐震補強から超高層建築物の風揺れ対策・長周期地震動対策まで広範囲な揺れに対し制振効果を発揮することが出来ます。
  2. 2.S造、RC造、SRC造の各構造種別およびその混合構造、ならびに新築、既存建築物問わずに採用が可能です。
  3. 3.構成部材がコンパクトなサイズに分割されているため、運搬し易く施工性が向上します。また、建物を使用しながらの施工も可能です。
  4. 4.柱・梁で構成された構面の全体ではなく、部分的な設置が可能であるため工期が短縮されます。
  5. 5.他工法と比較して安価に抑えることが出来ます。
  6. 6.ダンパー装置はユニット化されており、幅430mm、高さ750mmのコンパクトなサイズとなっています。
  7. 7.粘弾性ダンパーユニット(CST30)の数量を変えることにより減衰力の調整が可能のため、建築物の形状やプランに応じて柔軟に設置することができ、設計自由度の高い工法です。
  8. 8.耐久性と疲労特性に優れ、大地震の発生時などを除きメンテナンスが不要です。

[VESダンパー]

背景

新耐震基準(1981年)以前の耐震化が必要とされる建物のうち、集合住宅や宿泊施設、事務所ビルなどの民間建築物は、学校校舎や庁舎などの公共建築物と比較して耐震化が遅れているといわれています。これらの建物の耐震化を促進するためには、建物の所有者および使用者からの要望に応えるのはもちろん、構造規模・用途・形状・建物周囲の状況などにより柔軟に対応できる工法が必要です。特に集合住宅の耐震改修においては、採光・通風といった居住環境を確保しつつ、工事中の騒音・振動・粉塵なども抑えた、居住者が住みながら耐震補強できる工法が望まれています。
近年では、建築物に振動エネルギーを吸収する制振装置の技術革新が進み、耐震性能を効率的に向上させることが可能になったため、様々な建築物に採用されるようになってきました。また、東日本大震災においても、制振工法を適用した建物の被害の少なさが認められて注目を集めているほか、超高層建築物における長周期地震動の揺れ対策としても制振工法が推奨されています。
今後は、あらゆる建築物で制振工法の需要が高まってくると予想され、この需要に応えるべく本工法が開発されました。

実績

本工法はこれまでに民間の既存建築物に3件の補強設計実績があり、その内1件は完工済み、2件は現在施工準備中です。建物の用途は宿泊施設が1件、オフィスビルが2件となっています。
また、官公庁の既存建築物も1件の補強設計実績があり、現在施工中です。
基本計画検討を行っている案件は民間、官公庁を合わせて多数あり、今後の更なる適用が見込まれております。

今後の展開

東日本大震災の経験と現在発生が危惧されている東海・東南海・南海地震や首都圏直下型地震の切迫性から、住宅から事務所ビルまで新築・既存建築物とも、本工法がその機能を発揮できる対象建築物は多く存在しますが、主に以下をターゲットとして今後の展開を図っていきます。

  • 共同住宅、事務所ビルの既存不適格建築物の耐震補強(制振補強)
  • 既存、新築の超高層建築物の長周期地震動対策及び風揺れ対策
  • その他、建築物一般の揺れ止め対策

「VESダンパー工法」施工後のイメージ図

[集合住宅(制振部は仕上げ材で囲む)]

[事務所ビル(制振部は内装で囲むことも可能)]
[VESダンパー工法による施工例]

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